通常の体験談スタイルで掲載するのではなく、ご覧になる方のお役に立てるように経過と選択判断要素など生の経験談を極力披歴いただいた内容にしております。
前立腺がん 平成28年初頭 当時63歳 男性 重粒子線治療
①尿の出も悪くなり、PSAは漸次悪くなりつつありましたが急に7を越してきたので県下有数の専門病院を訪ねると8.5で癌が疑われ、直ぐ生検をしました。1泊2日入院で局所麻酔をし、針を数本差して細胞を取り出し検査するものです。術後は血尿などで数日は不便をきたしました。
②結果はグリソンスコア10段階中9で悪性
③通常の手術か放射線治療かの選択を医師から告げられましたが、自分で調べて検討した結果「重粒子線治療」を選択。最初の5か月はホルモン治療で癌の部位を小さくし(PSAは0.3以下に急下降、副作用で頭痛が続き「漢方薬五苓散」で緩和)、術前に体型に合わせた治療のベッドで固定するためのコルセット器具が制作された。治療はベッドに横たわり位置合わせの準備に7分くらいで治療の照射は3分で痛くもかゆくもなく簡単に終えました。それを1日1回で連続(平日)12回程度通院し完了。(なので、部位により照射回数が異なり、近くのビジネスホテルに4日~14日ほど滞在し治療する人も多く自宅との遠近は関係なく遠方から来られている方が半数以上です。日本に数か所しかなく遠いからと最初からあきらめる必要は全くありません)その後はかかりつけ医で予後の安心のためとしてホルモン治療を2年間の予定で開始。
④PSAも下がり重粒子線治療そのものの選択は満足しています。ただし、治療後のホルモン投薬治療の副作用は大きく、手の指が曲げられない、痛い、特にパーはできるがグーはできないため車の運転も慎重にしました。足首周辺も皮膚が黒紫に変色し血管も浮出す。手の血管も浮出し黒紫と醜い、指もばね指となりましたが手術せずがまん。医師に症状を訴え、薬も変えたり、1年後薬を減らし1.5年で早めに終了してもらいました。手指の痛みがが自然に治るのに3年かかりました。その後も時々痛みは出ましたが、(漢方薬の利用で)今は落ち着きました。ただし、足首周辺の紫の醜さは6年後の今もまだ残っています。抗ガン治療薬の影響は予想をはるかに超えています。
⑤6年経過しがん自体の再発はなく普通に過ごしています。後悔する点は治療後半年以内でホルモン療法は止めるべきだったと考えています。統計的に再発率が1.5~2%程度違うとのことでしたが、その代償としては副作用のひどさは大きすぎたと考えています。また、偶然かどうか、術後の薬剤服用後2年目から腎機能eGFRの数値が低下していき今も通常値まで回復しません。私はがん治療薬の薬剤性腎機能障害を疑っています。
⑥重粒子線治療は314万円ほどと高額ですが、普通の医療保険の特約で付随しておりほとんどの方は先進医療の対象者です。先進医療の対象リストは中年以降の方は健康なうちに一度見ておくことを薦めます(親のために有用なこともあり得ます)。がん保険も入られていれば2重に受け取れます。ただし、医療保険とがん保険を同一の保険会社の場合は重複支給しないとも聞き及んでいます。今から入る方は保険会社を1つにしないのも知恵かもしれません。なので多くの方が保険でご利用できるのに、お考えになる方がわずかであるのはもったいない。先進医療特約だけの保険(月額500円)も一つあります。若い方はご利用されるとよいです。
⑦重粒子線治療は部位が動く胃や腸以外の多くは治療対象ですので是非調べてください。通常の放射線と違い局所に限定した放射線治療なので体にやさしく手術による体力損耗などから解放されます。
※令和4年12月現在は前立腺がんへの重粒子線治療は健康保険扱いとなっています。
食道がん 令和2年夏 当時53歳 男性 放射線治療
①令和2年3月食事で喉に違和感を感じるようになり受診。
②大学病院で内視鏡検査をした結果大きな腫瘍が3つありステージは2~3であることが判明した。食道がんである。
③「まず抗がん剤で腫瘍を小さくする。食道を全摘し、胃を3分の1ほど切り取り、胃を引き上げて喉につなぐ手術になります」
④食道はほぼ全摘となる。食道の一部を切り取ると、食道がピーンとなり切れてしまうからだそうです。
⑤食道がんの手術はどのがんよりも大変な手術とは知りませんでした。食道がんの手術は首・胸・腹にかけ広範囲を切除し、傷も大きく肋骨を折ったりすることになる。4割の確率で合併症も起こり1番多いのは肺炎で死の危険にもつながる。すい臓がん・肝臓がん・肺がんの手術ですら必要としない人工呼吸器をつけての大手術となることが判明。
⑥手術のリスクと多大な体力の損耗を知り、多くの治療法を調べまくり、最後の結論は放射線治療を選択した。結果は満足している。
⑦実際は、考えるよりも早く手術することを希望する患者も多いとか。
⑧胸腔鏡手術でも肺が邪魔なので片肺を潰して、もう片肺だけで生命を維持したりと大変であったが、技術の進歩でダヴィンチを使っての手術が可能になりました。現在、さらに優秀な日本製の手術支援ロボット「ヒノトリ」が注目されています(課題は習熟する医師の増員)。
※女優の秋野暢子さんは食道がん・ステージ4(5つの腫瘍)でした。選択は放射線治療で4か月半後に仕事に復帰。
※がんの可能性を少しでも懸念したら、検査を受けるのは公立病院がお薦めです。がんが判明した時に民間の病院では経営への忖度も働き、当院でできる治療(手術等)を前提に入院の予約など決められがちです。その中で「ロボット支援手術ができる医療機関を紹介してください」とは言いにくいものです。そのような時も、公立病院であれば気軽に応じていただけることが多いです。なので、思いもしないケースも含めて、近くのクリニックなどで精密検査を受ける病院の紹介をされる際は遠くとも「公立病院」をお願いするのが無難です。